2016.11.13
中国人客を感動させる日本の医療サービス《2》
ダイヤモンドオンライン 2016年2月4日 莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
日本人には日常的な医療でも
中国人にとっては非日常
日常的にこんな医療環境に暮らしている中国人観光客が日本を訪れ、日本の医療サービスに接すると、信じられないと連発するほど感動を覚えた。観光の醍醐味は本来、その非日常性を楽しむことにある。
しかし、中国人観光客を感動させたのは、日本の日常的な医療サービスそのものだ。言い換えれば、日本では日常的なものが中国人観光客にとっては非日常的なものに変わっていったのだ。そのため、感動は一層パワフルなものとなり、日本に対する高い評価として次第に中国各地に広がり、つい、いまのメディカル・ツーリズムの人気の下地を作るほどの規模となった。
2004年頃から、私はいろいろなチャンネルを使って中国に向かって、次のように発言している。
1978年から始まった中国の改革・開放時代には、隠れたスローガンがあった。つまり「日本に学ぼう」というものだ。ただ、その頃、日本に学ぼうと努力していた分野は鉄鋼や家電製品、自動車、新幹線など、ハード的な分野だった。
いまは、中国はもう一度声を大にして、「日本に学ぼう」と宣言すべきだと私は思う。しかし、今度学ぶべき対象はむしろソフト的なものに変わってくる。医療サービスはまさにその典型例となった。
美容・医療などのサービス分野が
今後の日中経済交流の主役となる
番組のなかで報じられたある調査データーもなかなか面白い。
「美容関連で憧れる国は?」という設問に対して、来日経験のある中国本土・台湾・韓国・香港の20~49歳の女性800人の64%が日本を推した。韓国(57%)、フランス(26%)、アメリカ(17%)、香港(13%)、タイ(7%)を圧倒した実績だ。
数年前から私は日中間の交流はハードからソフトへ、有形のものから無形のものへと内容が変わっていくと主張している。
日本の医療サービスや美容に関心を集めている中国人観光客の動きを見ると、まさにそのような動線を忠実に描いている。
もちろん、市場も敏感に反応している。いまや、健康検査の仲介、医療通訳の紹介などを新しいビジネスチャンスとしてとらえている企業が6000社以上もある、と聞いている。まさに過熱気味になっている。
ハード的なものを中心に日中間で交流していた頃は、商品の良し悪しはその商品の品質や規格、機能に出ていた。それは数字で測れるものだ。しかし、サービスが主役となり、日中経済交流という大きな舞台に登場してくると、その良し悪しに対する判断は数字で表現しにくくなっているし、表現しきれないところもたくさん出てくる。
これは案外と近いうちに、これからの大きな課題として観光業をはじめその関連分野の企業や関係者を苦しませるかもしれない。早い時点からその対策を考える必要がある。